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梟や進化を待ちて二千年 島崎正彦

一読して納得してしまった。進化の度合いは、物によって、生き物によって様々である。しかし、梟の進化に二千年を要すると言われたとき、それに意義を唱えるような説があるだろうか。詩は事実を言うことではないのである。この二千年という長さは永久と置き換えてもいい。「森の哲学者」とも呼ばれる梟の風貌を思い出すたびにこの措辞が浮かび上がる。

虫時雨遠き進化の言ひ伝へ 末永朱胤

進化という語感は詩情とは程遠いところにある。だが、次に来る(言ひ伝へ)という言葉の物語性が進化という言葉に潤いを与えて、虫時雨の余情を醸し出している。

進化して零余子のごとく子を産まむ 和智安江

零余子は秋の山野の芋蔓にいくつも唐突に成る。そうして、採ろうとして伸ばした手を逸れて地上にぼろぼろ落ちてしまう。掲出句は、進化して零余子のようにたやすくたくさん子を産みたいものだ、と言っているのだ。大胆でしかも楽しい隠喩である。同時に現代社会をも浮き上がらせて、奥深い一句となった。

いつの日か月に還らん進化して あべあつこ

確か、かぐや姫は天上で罪を犯して地上に降ろされたのではなかったか。その罪が解かれて月から迎えのやってきたのが満月の夜だった。この句の作者もまた月から降りてきたかぐや姫だったのである。そういう二重性を身辺に仮しておくのも、豊かな想像を生み出してくれるだろう。

長生きも進化のひとつ日向ぼこ 山内美代子

百年前まで、世界の平均寿命は三十三歳だったという。現在の日本の寿命は八十歳を越えている。作者は日向ぼこのぬくもりから、長生きをしている実感を得たのだと思う。

進化など見て見ぬふりの恋の猫 牧野洋子

恋猫が凄まじい声を上げて家を出てゆくときの様相は阻止するすべもない。この世で、人間が直立二足歩行になったときにも、そうして人類の尾骶骨から尻尾が離れてしまったときにも、きっと恋猫は恋猫のままを押し通していたのだろう。
(見て見ぬふりの恋の猫)の措辞には唯我独尊の猫らしさを言い得ている。

恐竜の進化か庭の羽抜鶏 宇陀草子

恐竜の進化の果ては鳥たちなのだと言われ久しい。その進化の鶏も、今や羽の抜け替わる時期で、みすぼらしい姿をさらしている。その落差に思わず(これが恐竜のなれの果て)かと呟いたのかもしれない。

星冴ゆる進化の跡の尾骶骨 大豆生田伴子

進化ということばを真正面から捉えた格調の高い句である。宇宙の星の光が我々の目に届くころには、もしかしたら消滅してしまっている星もあるのだ。星との距離は、それほど遠いのである。片や人間にはかって尾のあった名残りの尾骶骨があった。記紀が伝える尾のある人が現れたのは吉野の山奥である。そこなら星はよく見えて、悠久の時間まで見えてくるかもしれない。


予選句

冬の茸進化するとき雨の音木津直人
進化して人を見てゐるポインセチア木津直人
日光連山枯野といへど進化の跡木津直人
少年の進化もくもくと冬田道木津直人
進化するもの点々と冬野の灯木津直人
進化ゆゑゾウも滅しし終戦日栗原良子
リハビリ室に進化のすこし秋兆し栗原良子
進化なく風も吹かないかかし村栗原良子
進化なる今一瞬の長き夜栗原良子
進化には乗らぬ銀河で発車する栗原良子
進化退化ありて薔薇園色溢る黒田靖子
進化するスポーツシューズや空高し黒田靖子
進化とは進歩にあらず月高し黒田靖子
始祖鳥は進化の証し冬銀河黒田靖子
進化するスイーツ赤く秋の街黒田靖子
寒月は進化し金の海の道兄部千達
夏の潮進化し脳裏に流れをる兄部千達
床涼み進化極まる冷気かな兄部千達
観月や進化の知恵で時を知り兄部千達
杜氏来て進化求めず酒作り兄部千達
夏雲や進化止まりし脳細胞小塩正子
星祭進化ばかりの世を憂ふ小塩正子
雲の峰進化の果てを呑みこみぬ小塩正子
秋晴れや進化を競ふロボット展小塩正子
スケートの技の進化は果てしなく小塩正子
「進化論」途中で閉づる小春かな西方来人
人工頭脳どこまで進化冬霞西方来人
冬花火三尺玉の進化かな西方来人
雪女郎進化退化の有りや無しや西方来人
進化にも遅速ありけり冬の草西方来人
進化する言葉の海や古酒を酌む佐々木靖子
核もまた進化の果実かかし立つ佐々木靖子
進化して菩薩となれや鬼の子よ佐々木靖子
進化退化論外にゐて麦を蒔く佐々木靖子
菊の籬百寿の進化をへ給ふ佐々木靖子
進化なぞ知るか金糸雀春の唄島崎正彦
進化せり夏の少女の脹脛島崎正彦
アルプスに進化はありや鱗雲島崎正彦
路真中蟷螂おもむろ進化せん島崎正彦
梟や進化を待ちて二千年島崎正彦
進化論飛び進級の春の空志村万香
紅葉坂進化の車音静か志村万香
この頃は進化競争年を越す志村万香
進化鍋正月近し舌づつみ志村万香
進化ロボ介護施設に春を呼ぶ志村万香
朝顔の花ひとときの進化かな末永朱胤
進化てふ永き忘却胡桃割る末永朱胤
虫時雨遠き進化の言ひ伝へ末永朱胤
凍て月や進化のしじま聴いてをり末永朱胤
産声や進化たどれば冬銀河末永朱胤
尾の失せて秋思始まる進化かな鈴木まさゑ
千年は進化に短し蓮は実に鈴木まさゑ
進化より零れしごとく木の実落つ鈴木まさゑ
着ぶくれて少し窮屈進化論鈴木まさゑ
今生の進化ここまで日短鈴木まさゑ
鰯の目進化の劇の句読点高橋寛治
進化より回帰が似合ふ曼珠沙華高橋寛治
蓑虫の進化の旅へぶら下がり高橋寛治
蓑虫や進化の貌を内に秘め高橋寛治
寒昴傍若無人進化ゆく高橋寛治
進化して太陽系の大蚯蚓武井伸子
前世の進化の記憶大枯野武井伸子
進化して宇宙の隅に胡桃食ぶ武井伸子
スケーター進化の翼生やしけり武井伸子
進化していよよ焚火の恋しかり武井伸子
鯉を染め進化する色冬紅葉谷原恵理子
離るるは家族の進化冬の星谷原恵理子
進化せぬ昭和のコスメ小六月谷原恵理子
進化せぬ意地赤き手で紙を漉く谷原恵理子
進化する旅の形よ初時雨谷原恵理子
進化して雲になりたき榠樝かな近本セツ子
進化には関りもなく夜のちちろ近本セツ子
進化思へば初冬の滑り台近本セツ子
さびしさに進化したくて冬の蛇近本セツ子
進化といふ幻にゐる大嚔近本セツ子
未分化の分化進みて蛇穴に辻村麻乃
木通の実進化の種を内包す辻村麻乃
脈絡のなき進化論冬林檎辻村麻乃
進化てふ揺るぎなきもの帰り花辻村麻乃
地層には進化の起源山眠る辻村麻乃
冬黄蝶の進化後は黄金色らしき同前悠久子
銀狐パソコン進化し過ぎとも同前悠久子
日向ぼこわたしの進化は歌詞一行同前悠久子
進化するレンジ料理や湯豆腐も同前悠久子
改めて「進化」と「進歩」返り花同前悠久子
進化せし喜怒哀楽や日向ぼこ 豊田静世
飛び魚の夢は鳥への進化かな 豊田静世
はて進化かと我の脳くるみの実 豊田静世
狐の尾人に進化の尾骶骨 豊田静世
光年の星の進化や蛍の火豊田静世
秋気澄む進化の果ての腰痛や中﨑啓祐
ゾウガメの昼寝の夢や進化論中﨑啓祐
秋高し進化の己れ跳躍す中﨑啓祐
進化せるゴジラ咆哮月冴ゆる中﨑啓祐
進化する我れ浮遊せり冬銀河中﨑啓祐
パソコンの進化に惑ふ長き夜中島外男
秋深しあらためて読む進化論中島外男
進化する世に背を向けて秋遍路中島外男
ロボットの進化は早し地虫鳴く中島外男
海底の進化はあるや鮟鱇よ中島外男
着ぶくれて進化とどめる刻楽し西田もとつぐ
俳諧に進化はありや鳥雲に西田もとつぐ
人類の進化はありや原爆忌西田もとつぐ
ナウマン象進化の牙の薄紅に西田もとつぐ
地球は進化す津波は川を遡る西田もとつぐ
進化して人の香りの柘榴かな服部さやか
進化して世界は狭し天の川服部さやか
進化して巨人の影や白障子服部さやか
進化するために見に行く冬の波服部さやか
進化する人の白息つかめさう服部さやか
銀河系宇宙の進化竜の玉浜岡紀子
海へ出で巨大に進化した鯨浜岡紀子
木枯しの夜はロボットと進化論浜岡紀子
一粒づつ進化の旅へ柘榴割れ浜岡紀子
ふくろふは森の進化の頂点に浜岡紀子
捨てし尾の辺り進化の夜長かな浜田はるみ
進化して花の袖持つ疣むしり浜田はるみ
目に見えぬ進化の速さ鳥渡る浜田はるみ
進化とは内なる点火龍淵に浜田はるみ
綿虫とんで我は進化に遅れけり浜田はるみ
進化など見て見ぬふりの恋の猫牧野洋子
進化して二足歩行や冬初め牧野洋子
銀杏散るひらりと進化して蝶に牧野洋子
進化などもつてのほかと菊の花牧野洋子
嬰児の喃語は進化冬初め牧野洋子
鶏頭や進化してゐる脳の襞宮本郁江
産声は進化の一歩今朝の冬宮本郁江
進化論語り明かすや星月夜宮本郁江
蓑虫の進化せぬまま下がりけり 宮本郁江
蟷螂や八頭身に進化して   宮本郁江
齢重ね進化を重ね花芒村瀬八千代
進化の世見ぬふりをして帰燕かな村瀬八千代
山眠る前の騒めき進化論村瀬八千代
人の手を離れし進化冬銀河村瀬八千代
十二月進化の渦に溺れけり村瀬八千代
進化とは進むことより化ける秋山内かぐや
進化する秋のカタログ後を追ふ山内かぐや
後手後手になりて進化の秋昴山内かぐや
とんぼの眼前後左右に進化して山内かぐや
長生きも進化のひとつ日向ぼこ山内美代子
冬山家進化縁なき床柱山内美代子
進化てふ言葉ふはふは冬の蝶山内美代子
進化遠し大根持つて応援歌山内美代子
進化して夜着はいつしか外出着山内美代子
灯火親し我は進化の途中なり山下添子
翼とれ人類進化冬田打つ山下添子
美少女も蛇も進化の衣を脱ぐ山下添子
うたた寝に進化の遠し山椒魚山下添子
地に上がるダイオウイカの進化論山下添子
進化して空を飛ぶ夢大海鼠和智安江
老いゆくは進化の途中かたつむり和智安江
進化乃果地球消滅冬銀河和智安江
進化して零余子のごとく子を産まむ和智安江
綿虫の狂ひ飛ぶ日の進化論和智安江
類人猿進化の途上冬隣浅見百
進化して電柱地下に秋祭り浅見百
桐の花飛ぶも飛ばぬも進化かな浅見百
工場に京菜栽培進化かな浅見百
進化して蝶の燐粉少し増え浅見百
いつの日か月に還らん進化してあべあつこ
一斉に蝶への進化銀杏散るあべあつこ
進化して案山子は空へ羽搏けりあべあつこ
大陸へ颱風進化涅槃経あべあつこ
爽やかや進化の果はされかうべあべあつこ
ありがとう言へる進化や初月夜阿部暁子
進化した指どんぐりを整列す阿部暁子
百日の子は億年の進化中阿部暁子
竹の春不惑もまだまだ進化なり阿部暁子
ただ進化見守り給へ大銀河阿部暁子
雪の夜の薪またくべて進化論新木孝介
進化して大河やがては冬の海新木孝介
凧揚のたかくあがれと進化論新木孝介
進化論落とせば割るる寒卵新木孝介
狼の飼ひ慣らされぬ進化論新木孝介
進化するやがて亀鳴く声を聴く五十嵐孝子
秋夕焼け進化途中の我包む五十嵐孝子
寒の猿二匹向かひて進化論五十嵐孝子
進化する咳止め薬の大広告五十嵐孝子
深海の海鼠は進化拒絶して五十嵐孝子
進化して壊れし世界去年今年伊丹竹野子
進化なきリスク憂ふや年新た伊丹竹野子
進化なき国々に春遠かりき伊丹竹野子
進化なき我が賤が屋の注連飾り伊丹竹野子
アネモネや倫理に違ふ進化論伊丹竹野子
神よりも人は進化をして枯るる岩淵喜代子
ホカロンを背中にあてて進化論岩淵喜代子
進化して円座を好む尾骶骨岩淵喜代子
進化してしまへば螻蛄の鳴くばかり岩淵喜代子
萩は実に赤子は立ちて進化論岩淵喜代子
恐竜の進化か庭の羽抜鶏宇陀草子
穴まどひ縄一筋となる進化宇陀草子
進化して甘くなりたる吊るし柿宇陀草子
穭の穂垂るるも進化とは言はず宇陀草子
綿虫の宙にとどまる進化論宇陀草子
進化するロボット人形涼新た及川希子
家電市進化ばやりや秋うらら及川希子
妖怪の進化を話す児の良夜及川希子
ゲーム機の進化競争秋の宵及川希子
ポケモンの進化にはまり冬に入る及川希子
星冴ゆる進化の跡の尾骶骨大豆生田伴子
脳力退化脚力進化反魂草大豆生田伴子
交信の進化宇宙へ木守柿大豆生田伴子
世の進化榾の火色はとこしへに大豆生田伴子
進化とは秋天を突く高層ビル大豆生田伴子
朝霧を抜け急行へ進化せり岡本惠子
ダリ風の進化幻視す小六月岡本惠子
進化して時計仕掛けの冬銀河岡本惠子
闇汁から托鉢僧の進化論岡本惠子
人類の進化を称へ懐手岡本惠子
炬燵してもはや進化も止まる夜鬼武孝江
進化系ゲームの世界氷点下鬼武孝江
枯蓮の池に進化は沈み去り鬼武孝江
進化形馬が振り向く冬の朝鬼武孝江
ウインドウズ進化の冬に腰引けり鬼武孝江
芋虫のころころ進化こころざす河邉幸行子
進化てふ日の巡るなり秋団扇河邉幸行子
初嵐マウスを使ふ進化論河邉幸行子
もみづれる進化たどれば素でありぬ河邉幸行子
残る虫鳴きて進化をたしかめる河邉幸行子
進化して魂となりたる団子虫川村研治
咀嚼して芋虫進化すすめをり川村研治
眼鏡きらきら進化の果ての月の舟川村研治
ささやかに進化を歌ふ小鳥かな川村研治
悲しみは寒さとなりぬ進化して川村研治
海原に進化を秘めて月の道木佐梨乃
進化をば一手に引き受けスーパームーン木佐梨乃
初詣進化の目も無き和服かな木佐梨乃
冴返る刀や進化閉ざさるる木佐梨乃
歳暮れて進化はげしきWEB技術木佐梨乃