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今回の兼題の「手足」は具体的なイメージがはっきりしているだけに、うっかりすると、動作の単なる報告になりがちで、難しい。いかにイメージを膨らますことができるか、遥かなものへの思いに繋げることができるかということになるだろう。(川村研治)

伸びやすき手足の爪や鳳仙花 あすか

確かに手足の爪は伸びやすく、誰もが頷いてしまう措辞である。一度くらいは日常の中でこんなことばを口にしたことがあったかも知れない。中七の(や)の切字は勿論断定の助動詞であるが、同時に感嘆詞の役目もして、爪に寄せていく作者の心を伝えている。その爪に鳳仙花の汁を絞って塗ってみたことを思い出したのだろう。(岩淵喜代子)

おもむろに手足生え出す昼寝覚 鈴木まさゑ

昼寝から覚めたとき、一気に覚醒するのではなく、徐々にあちらから戻ってきた、という具合に心身ともにはっきりしてくる。この句では忘れていた自分の手足が「生え出す」という把握が絶妙で、読者にその時の感覚を思い出させてくれる。

働きし鋼の手足夜涼かな 近本セツ子

この句から改めて考えさせられたが、人間の種々の活動する実働部隊は手と足であり、重さと嵩張りでは大部分を占める胴体は実際に働いている訳ではない。そう思うと、昼間働きづめであった手足が如何に大切な存在であるかを実感する。それが「鋼の手足」と表現したことから伝わってくる。「鋼」の一語から殊更に夜の涼しさがありがたく感じられる。

手足なきこけしの嘆き流れ星 豊田静世

こけしに手足がないことの意味を問われているように感じてしまうのも、題として「手足」を課された効果であろうか。手足のないことの気付きからこけしの嘆きに思い至る。可愛げな笑顔のこけしの嘆きは作者の嘆きであろうし、人間ひとりひとりの嘆きであり、このような単純素朴でありながら、深い思いを誘うこけしの魅力を感じさせる。流れ星は消えてしまうからこそ人々の心に残るのであり、こけしも手足の欠落のために、われわれの心に安らぎを与えるのだろうか。

新緑や手足を伝ふ青い影 服部さやか

新緑の木立の中を歩く。木々の匂いとともに葉陰から洩れてくる木漏れ日が心地よい。「手足を伝ふ青い影」はある種のなまめかしさを感じさせるような表現だ。手足を伝わって、作者の心のなかまで入り込んでくる新緑の力に圧倒されて、作者はにんげんから離れて一本の樹に変化してしまうような幻想を抱かせる。

月光の氷柱に手足生えにけり 岩淵喜代子

月光にきらきらと照らし出されながら氷柱が少しずつ成長していく。日中は太陽の光でいくぶん溶け出しながら太々とした氷柱になったものが、夜になると、月光のはたらきで手足が生えていくのだ、と表現して読者を圧倒する。この句、「月光の氷柱」はこのように解釈するのが第一感だが、あるいは月光の光の柱を氷柱のようだ、と言っているのだとも解釈できる。冷たい寒月の光は氷柱のように、少しずつ手足を生やしながら地上を照らしだしている、というのも魅力的である。

突かれて亀の子手足首しまふ 高田まさ江

よちよちと歩いている亀の子を子供たちが取り囲んでいる。苛めるわけでもないが、棒きれで突いたり、指で押したりしている。亀の子はぎくしゃくと手足を引っ込め、ついで首も引っ込める。そうなれば、大きめの小石のようなものである。そして、子どもたちが飽きて行ってしまえば、またゆっくりと手足首を出して歩きだすのだ。


予選句

急流に挑む手足や涼舟大石良雄
老いし身の手足奉公松手入れ大石良雄
仰向けに蝉の手足は動かざるひろ子
短夜の湯船の手足たよりなくあすか
父母に手足いただき黄金虫あすか
手足涼しく横浜の坂下りる大豆生田伴子
浜を行く手足健やか雲の峰大豆生田伴子
マリオネットの手足の拗ねて夏夕べ大豆生田伴子
いそがしき赤子の手足朝曇大豆生田伴子
登校の日焼の手足列となる大豆生田伴子
鰯雲沖へ手足は帆を孕む岡本惠子
溝萩の沼へ手足のほの白く岡本惠子
桑の実や手足に緩き下り坂岡本惠子
横断の蝦蟇は手足を持て余し岡本惠子
喧嘩して手足抱える金魚玉岡本惠子
みちゆきの手足もつるる竹の花尾崎淳子
形代の手足よぢれて雨近し尾崎淳子
梅雨満月手足呆けてしまひけり尾崎淳子
流蛍を追ひにし手足今眠る尾崎淳子
木苺を含みて手足より老いぬ尾崎淳子
亀の子の手足の力海めざす河邉幸行子
帰省子の手足泰けし青畳河邉幸行子
青嵐手足はたらかせて進む河邉幸行子
片蔭や手足もの言ふ野外劇河邉幸行子
少年の手足長かり晩夏光河邉幸行子
あかあかと手足の記憶蛇にあり川村研治
手足総動員してをり蝉の羽化川村研治
大仏の手足おもふや油照り川村研治
手足みな左右対称秋立ちぬ川村研治
新涼の手足のばして眠りけり川村研治
手や足に数多のダニよ梅雨重し木佐梨乃
子供らの笑顔や蝉の手足もぐ木佐梨乃
日の盛り沙漠の宿に手足伸ぶ木佐梨乃
長安の秋麗なるや手足伸ぶ木佐梨乃
猿猴の手足や齧りかけの桃木佐梨乃
自動噴水手足のやうに子を招く木津直人
老燈籠手足を止めて空を見る木津直人
手足見せ盆踊りより帰り来る木津直人
諍ひの手足もありて良夜かな木津直人
処暑の夜の手足をさする家居して木津直人
炎天の下や手足を捥ぎながら栗原良子
目覚まして手足失せたる熱中症栗原良子
汗拭かず手足競ひぬ丸太斬り栗原良子
頬焼けて細き手足の代打吠ゆ栗原良子
泳ぐこと手足伸ばすや唯一の栗原良子
新雪に手足伸ばして大の文字黒田靖子
春琴に手足奉公桐の花黒田靖子
平成の手足長き子踊り出す黒田靖子
帰省の子手足弛めて直眠る黒田靖子
炎昼や手足縮めて樹の影に黒田靖子
踊り女の手足麗し円描く兄部千達
虫売りの手足は長き夜店かな兄部千達
雁渡し手足を振つて歩きをり兄部千達
手足にも念を込め行く秋遍路兄部千達
野分めき手足押す風楽しみぬ兄部千達
甚平や手足の長き親子連れ小塩正子
昼寝覚手足まあるい赤子泣く小塩正子
手足なきこけしの顔に蠅の糞小塩正子
アマリリス手足太きは親譲り小塩正子
炎天や手足激しく大太鼓小塩正子
喜雨や喜雨田水に手足洗ひけり佐々木靖子
早苗饗の手足清めて末席に佐々木靖子
枇杷の実や赤子の手足宙を掻く佐々木靖子
登り来て夏炉にかざす手足かな佐々木靖子
大の字の手足の先の青野かな佐々木靖子
大木に手足立てては蝉時雨 志村万香
夏休みラジオ体操手足かな 志村万香
あくびして手足のばせる残暑かな 志村万香
秋近し手足を洗ふ猿の群 志村万香
六十年手足のびきり秋の空 志村万香
かく小さき蟻に手足のうごめける末永朱胤
魂に手足の生えて雨蛙末永朱胤
昼寝覚め手足の先の指数ふ末永朱胤
虚空より手足なき夏襲ひけり末永朱胤
原爆忌天使の像に手足なく末永朱胤
顔手足無くてやさしき竹婦人鈴木まさゑ
妖怪の手足いきいき夏芝居鈴木まさゑ
おもむろに手足生え出す昼寝覚鈴木まさゑ
いなびかり闇に手足のあるごとく鈴木まさゑ
始祖鳥に手足ジュラ紀の星流る鈴木まさゑ
ふるさとや手足投げ出す夏座敷西方来人
プールから長き手足が上がり来る西方来人
かがり火に手足の影の踊りけり西方来人
運動会手足踏ん張る組体操西方来人
しなやかな手足腰つき風の盆西方来人
遠雷や手足とんがる膝の猫高橋寛治
関取の手足の張りや天高し高橋寛治
待ちぼうけ扇子ではたく手足なり高橋寛治
夏痩せや烏賊の手足のやはり十高橋寛治
車窓より手足くすぐり夏の海高橋寛治
ほうたるの闇に手足の溶けゆける武井伸子
梅雨蝶に手足もつれて歩きけり武井伸子
泳ぐ人手足だんだん櫂になり武井伸子
遠泳の手足くるりと空に浮く武井伸子
人間は手足遣ひて踊るかな武井伸子
ねぶた囃子手足故郷を懐かしむ谷原恵理子
回遊す跳人手足は灯を払ひ谷原恵理子
子の手足絆創膏ある晩夏かな谷原恵理子
手足きちんとたたみ茶室へ今日の秋谷原恵理子
手足重き残暑ノートは閉ぢしまま谷原恵理子
谷覗くための手足や烏瓜近本セツ子
葛城の神の夕立を受く手足近本セツ子
かき氷まづ手足より甦り近本セツ子
働きし鋼の手足夜涼かな近本セツ子
砂浜に自在の手足秋立ちぬ近本セツ子
跣とは自由な子どもになる時間辻村麻乃
掌を透かして見れば秋夕焼辻村麻乃
階段の一足毎の蝉の声辻村麻乃
秋曇り留守居の手足よく伸びる辻村麻乃
足指に猿の記憶や運動会辻村麻乃
両手足使ふ楽器へ夕涼風同前悠久子
こすもすや十五歳の手足細長き同前悠久子
しなやかに戯れ合ふ猫の手と足と同前悠久子
祖母は足袋わたしは手袋編みし日も同前悠久子
五万石踊りに手足あふれけり同前悠久子
緑陰や手足を組みてヨガ呼吸豊田静世
手足折り熱砂に端然スフインクス豊田静世
手足なきこけしの嘆き流れ星豊田静世
蜘蛛の網に手足とられし虫いくつ豊田静世
百足競争手足あづけて息合はす豊田静世
打ち水や手足を白く風ぬける中崎啓祐
藍浴衣踊る手足のたをやかさ中崎啓祐
飛び跳ねる木偶の手足や夏芝居中崎啓祐
蜩や手足の重さもてあまし中崎啓祐
野茨や手足をうがつ錆びた釘中崎啓祐
目覚めたる手足を伸ばす夏の入り中島外男
沙羅の花六十過ぎて手足口病中島外男
優曇華や手足のしびれぶり返す中島外男
幼子の手足となりし海水浴中島外男
夕凪や手足を伸ばし横泳ぎ中島外男
ひと蹴りに蛙の手足晴れ渡る中村善枝
胡瓜揉む手足の先に風はらむ中村善枝
水馬の手足の下に茜空中村善枝
空蝉や残る手足に力あり中村善枝
がかんぼのまろき手足に寄り添へり中村善枝
老いの幸五体投地の昼寝せり西田もとつぐ
空爆なし手足伸ばして昼寝せり西田もとつぐ
イワカガミ手足のよぢる槍ヶ岳西田もとつぐ
敗戦忌なほ生き抜かん枯れ手足西田もとつぐ
水浴の孫の手足の水模様西田もとつぐ
ひとりでに手足伸びゆく夏休み服部さやか
新緑や手足を伝ふ青い影服部さやか
蛇の衣手足なければ身の軽く服部さやか
分け入れば手足なくなる大花野服部さやか
一日の手足労ふ零余子飯服部さやか
夏果ての水平線を見る手足浜岡紀子
日焼け子の急に手足が長くなり浜岡紀子
爽やかに手足を使ひ拭き掃除浜岡紀子
騎馬戦の手足が秋を暑くする浜岡紀子
海蠃回し口も手足もよく動く浜岡紀子
緑陰に坐れば手足透けにけり浜田はるみ
螢川手足のほのと光り合ふ浜田はるみ
手足省き魚となりけり川潜り浜田はるみ
雲海を抜け出て手足軽くなり浜田はるみ
白絣手足に風を通しをり浜田はるみ
水羊羹母の手足となるひと日牧野洋子
産衣よりはみ出す手足青田風牧野洋子
籐寝椅子手足の先の海青し牧野洋子
沢蟹や手足乱れず石の陰牧野洋子
夕顔や手足きりりと男踊り牧野洋子
手足出て歩く茶釜や夏の寺宮本郁江
夏芝居手足揃へて出番待つ宮本郁江
子供等の手足伸びたる更衣宮本郁江
夏服の手足の長き高校生宮本郁江
トルソーに手足の欲しき夏の果宮本郁江
空蝉の手足もがれて苔の上山内かぐや
夏芝やベビーの手足と会話する山内かぐや
松ヶ枝の手足の如きオブジエかな山内かぐや
アカシアの花降り積るわが手足山内かぐや
夏休み孫の手足も計るなり山内かぐや
ごつごつの手足の月日終戦日山内美代子
嬰児の手足ばたばた泣き相撲山内美代子
ちぐはぐな園児の手足運動会山内美代子
湯の中の手足すつきり秋に入る山内美代子
停電の手探り素足探りかな山内美代子
地芝居や手足悲しき女形山下添子
衛兵の手足きびきびリラの花山下添子
盆踊り手足のマリオネットめく山下添子
達磨忌の手足休ます座禅かな山下添子
浴衣よりはみ出す手足鄙の宿山下添子
寄居虫の手足ささつと転居了和智安江
短夜の夢の言葉に手足生ゆ和智安江
祭終へ木偶の手足に人の熱和智安江
尻上がり出来ぬ手足や夏燕和智安江
岸壁を登る手足や濃竜胆 和智安江
山滴る手足もろとも真みどりにあべあつこ
吾が前を踊る手足の長きことあべあつこ
谷風に手足をさらすえごの花あべあつこ
花魁草手足ほつそり老いんとすあべあつこ
夏草に手足を擦りつつゆけりあべあつこ
手も足もぱたぱた走る麦藁帽阿部暁子
音あれば手と足動く夏祭阿部暁子
行く夏や手足しつかり母の背に阿部暁子
強い子に手も足も出ず秋桜阿部暁子
秋空へ手足上手にジャングルジム阿部暁子
てつぺんに手足でとまる蜻蛉かな新木孝介
柿くへば手足の長き尾長猿新木孝介
秋の日の手足たたいて位置につく新木孝介
秋澄むや手足の揃ふ衛兵交代新木孝介
知恵の輪や手足からめて冬隣新木孝介
梅雨晴間手足ぎくしゃく初舞台五十嵐孝子
夏木立手足ゆるめて太極拳五十嵐孝子
スベスベと手足かからぬ百日紅五十嵐孝子
手足舞ふひよつとこ踊り夏座敷五十嵐孝子
青空に手足押し出す初泳ぎ五十嵐孝子
今朝もまた手足素直や立葵石井圭子 
夏帽子長き手足で駆けて来る石井圭子 
海の日や騒ぎ疲れた両手足石井圭子 
ふたりして手足ぶらぶら海月浮く石井圭子 
夏の蝶足手まとひの人と居り石井圭子 
竹島を手足で盗む毒蛾かな伊丹竹野子
毒茸や手足の出せぬ不義の民伊丹竹野子
秋風や手足を持たぬ風見鶏伊丹竹野子
秋霖や足手纏ひの野党衆伊丹竹野子
竹島や手足に染みる秋の風伊丹竹野子
生きてゐるかぎりの手足山椒魚岩淵喜代子
八朔の手足を水に浸したる岩淵喜代子
ひぐらしや手足をたたむ死者の前岩淵喜代子
月光の氷柱に手足生えにけり岩淵喜代子
蟻穴へ手足纏めて屈みけり岩淵喜代子
夏布団蹴上げし嬰の手足かな宇陀草子
補虫網かゝげて手足長き子ら宇陀草子
荒梅雨や国宝仏の手足欠け宇陀草子
ほとゝとぎす鑑真像の素手素足宇陀草子
甚平や斯くも短しわが手足宇陀草子
ねむる子の手足の爪切る梅雨晴間及川希子
田植する泥の手足の動くまま及川希子
夏祭り手足揃へて輪の中へ及川希子
病む人の手足をさする炎天下及川希子
青葉木菟手足を揉んでストレッチ及川希子