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薫風や金太郎飴増殖す  ゆうゆう

★青葉を抜ける健やかな風の中、どしどし生まれ続ける金太郎飴。赤いほっぺも、ちょっと歪んだ輪郭までもまるきり同じ金太郎に「増殖」という言葉が、妙味を加えている。そういえば神宮の銀杏はすべて兄弟だという。コピー並木を渡る風に、金太郎飴が無気味に笑う。(あき子)

少年の白きカンバス風光る  米川五山子

★いつまでも白いままのカンバスに向き合う少年。彼の瞳には一体何が映っているのだろう。街、森、泉……。こどもと大人の境界線にいる者だけが見える何かがきっとあるのだと思う。そんな彼が描こうとしているもの、それは紡ぎたての風そのものなのかもしれない。(あき子)

海原の呼吸を見たり風光る  常俊明子

★「風光る」。四季において青春の輝きのような季語である。波涛をきらめかせ、風が海をわたる時、作者は海原に呼吸を見たのだという。どこまでも明るく健やかな風景がそこにある。次々とこちらに寄せてくる波が、まるで喜びに大きく胸をふくらませているかのように。(あき子)

春風と人の過ぎ行くくわりんの木  今野志津子

★くわりんの木、なぜかそれだけで詩情を呼び出す木である。その時期になると、ぼたぼたと惜し気もなく地上に落ちる大きな実を、人はたいして利用もしない。それなのに、なんだかその実を待っている。あのずうたいの大きさといい、でこぼことした手触りといいなつかしさのかたまりのように思える実である。作者もそうした一人。まだ、葉もほとんどない木をくわりんと意識しながら、春風と共に通り過ぎてゆくのである。(喜代子)

画帳抱く娘とすれ違ふ春の風  千秋

★彼女の画帳には、ついさっきまで見つめていた春の時間が詰まっている。そしてそれを、まるでその時間がこぼれてしまうかのように、しっかり胸に抱いている。これから彼女は部屋に戻り、キャンバスに向かい、改めて画帳を紐解く。あたたかい木漏れ日が、小鳥の囀りが画帳から溢れ出す。そう、彼女は時間を越えて春を持ち歩いているのだ。(あき子)

金縷梅や移ろふ風のありどころ  平田雄公子

★花の名前は読みにくい。紫雲英=げんげ、辛夷=こぶし、山桜桃=ゆすら、馬酔木=あしび等いずれも読めないひとが多い。しかし、実際の花に出会うと、文字が花の姿や性質をとらえていることに頷いてしまう。「金縷梅(まんさく)」もまたそうである。まんさくは「まず咲く」という意味もあるように、冷たい風の中で金色の不思議な花を咲かせている。今まさに咲いている花であるから、見てもらいたい。風になびくほどの花びらがあるのでもない。いや冷たい風のためにあんな捩れた花びらなのかと見詰めていると、風の行方が妙に気になってしまう。(喜代子)

かにスキの寡黙を競い風の音  朱雀弘

★蟹を食べる時は、みな一様に無口である。蟹だけを見つめる時間。解体しつつ湧き出る疑問。このイキモノは海底で一体何を見てきたのだろうか。色とりどりの珊瑚、頭上を渡る巨大な烏賊、はるか海面を透ってくる光の矢。風の音に相まって、ふと蟹の記憶を食べているような気持ちになってくる。(あき子)

風花や子に話しやる母の恋  只野みつ子

★風花は、「かざばな」「かざはな」のどちらの発音もつかわれているようだ。雪空でもないのにゆきが舞う。まして晴天から降ってくる雪の白さは、異次元からとどくようにも思えて、人の心を見知らぬ場所へさそいこむ。すぎ去った恋を語る母は、遠い世界のことを話かけているのだ。子もまた、見知らぬ遠い世界の物語としてきいている。風花の無音が、はからずも非日常の世界をつくりだしたのかも知れない。(喜代子)


予選句

春風やベンチに睫毛気にする子平田雄公子
風花や遺影の母は笑みしまま大津けい
風邪の子の赤き舟折る薬包紙稲葉禮野
軒下の垂氷手にして空仰ぐ
風邪ひかずことしいちねんおくりたい鯉江久子
髪撫でる母さんのよう春の風只野みつ子
溜め息は思い出溶かす微風かな青木幸
雪風に頬赤らめてみくじひく冬木萌
マルクスも世紀を駈けて終わる風夢一夜
風の中笛を吹く子の半ズボン梅川