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立冬の鏡の奥の時計鳴る 武井伸子

実際には鏡に時計が映っているのだろうけれど、このように表現されると、鏡の奥にもう一つ時空を異にする別の世界があり、作者にだけ鏡を通じて向こうの世界の時計の音が聞こえてくるような気がする。ゆるやかな季節から厳しい季節である冬の入口に立った作者の気構えによるのかもしれない。(川村研治)

時計屋のしづかなる刻春夕焼 近本セツ子

時計屋にはいろいろな時計が並んでいて、賑やかなイメージがあるが、実際にはどれも音を発していることは殆どないから、静かな感じが保たれていると思われる。作者はそれを承知の上で、「しづかなる刻」を春の夕焼で店の中まで赤く染まったときに殊更感じ取ったのだと思う。訪れたその一瞬は貴重な刻だ。(川村研治)

村中の時計遅るるぼたん雪 浜田はるみ

春になってから降る雪は重く湿っている。ぼたん雪はその音感の上から付いた名称だろうと思うが、村中の時計が遅れるとは、嘘八百もいいところだが、こう言われると、村中を包み込むように降り続いている牡丹雪をイメージできるし、なんとなく納得してしまう。牡丹雪の特徴をよく捉えているのではないだろうか。(川村研治)

冬籠柱時計の下に父 あべあつこ

柱時計は部屋の中心だ。部屋の真ん中に据えられていて、父の席はその真下にある。その父はでんと構えて家中のことを見ているかもしれないし、病に臥せっているかもしれない。いずれにしても柱時計という存在感と父たるべきものの存在感が合致している。冬籠というイメージにはなくてはならないものだ。(川村研治)

目隠しの時計回りに青き踏む あすか

野遊びの一場面、目隠しの人は鬼なのだろう。
時計という言葉も無理なく見事で、しかも、(青き踏む)という野遊びの風景が即物的に伝わってくる。(喜代子)


作品集

昼寝覚め弄る時計転がりをり亀井好夫
いま何時と問はれて無言秋の暮亀井好夫
山頂のからくり時計冴えかえるひろ子
時計無き手首見る建国記念日あすか
目覚まし時計鳴り止まず春隣あすか
目隠しの時計回りに青き踏むあすか
短日や電池切れたる腕時計宇陀草子
綿虫や電波時計に秒針なし宇陀草子
去年今年柱時計の振り子かな宇陀草子
雪の夜の嬰の寝息と砂時計宇陀草子
遅れ鳴る時計もありて日脚伸ぶ宇陀草子
柱時計遅れ始めて冬に入る及川希子
着膨れて行き交ふ広場時計台及川希子
懐中時計ちらりと見ては懐手及川希子
楪や母の時計の龍頭巻く及川希子
花時計植ゑ替へられて年新た及川希子
極月や柱時計の無表情大豆生田伴子
病院の大きな時計冬暖か大豆生田伴子
時計よりとびだす童話春隣大豆生田伴子
目覚しのウィンナーワルツ寒明くる大豆生田伴子
大空へ時計を放ち青き踏む大豆生田伴子
砂時計落ちいそぐ日や毛糸編む岡本惠子
埋火やぼんぼん時計ふたつ鳴る岡本惠子
時計屋に無数の時計冬銀河岡本惠子
霧笛とは巨大海鼠の腹時計岡本惠子
老姉妹庭を埋めたる時計草岡本惠子
寒すずめ時計回りに啄みぬ尾崎淳子
大寒や根岸の里の大時計尾崎淳子
海胆ひとつ体内時計動きだす尾崎淳子
菜の花のお浸し柱時計鳴る尾崎淳子
花吹雪時計のみんな狂ひたる尾崎淳子
春の雪振子時計の音ばかり河邉幸行子
朝寝して時計に罪を被すなり河邉幸行子
亀鳴くやペーパーナイフと腕時計河邉幸行子
春日遅々おもちやに紛る砂時計河邉幸行子
目貼剥ぐ村の広場の大時計河邉幸行子
梟が柱時計になつてゐる川村研治
雪雲や時計がすこし進みがち川村研治
何もせずをれば春めく腕時計川村研治
朧夜の父の懐中時計かな川村研治
佐保姫の手をかざしたる花時計川村研治
啓蟄は今すぐそこか振り子時計木佐梨乃
寝かし置く八角時計に春の塵木佐梨乃
投げ売りの大正時計春の暁木佐梨乃
古茶淹れる腕にサイバーすぎる時計木佐梨乃
凍解けや原子時計の周波数木佐梨乃
流行風邪からくり時計を誰も見ず栗原良子
捨てられぬみかんもひとつ時計脇栗原良子
自嘲者の時計回りに春句会栗原良子
進学の時計に礼状出さぬまま栗原良子
曽祖父の時計直して春航す栗原良子
沈丁の蕾は時計持つてゐる黒田靖子
ままごとの時計も昼寝春深し黒田靖子
花冷えや光にかざす砂時計黒田靖子
梅一輪形見の時計抽斗に黒田靖子
入園の子に鳩時計鳴りにけり黒田靖子
春疾風砂時計使ふ喫茶店兄部千達
木の芽張る時計台にて待ち合はせ兄部千達
渦見船時計とともに移動して兄部千達
炉火赤し柱時計は時刻む兄部千達
二日灸時計の音が降つてくる兄部千達
冬の夜や不意に鳴り出す鳩時計小塩正子
雪催君待ちわびる時計台小塩正子
年越しやデジタル時計へ数多の眼小塩正子
春浅し目覚まし時計を遠く聞く小塩正子
立春や砂の落ちゆく砂時計小塩正子
初春やからくり時計の鳴るを待つ 佐々木靖子
福笹や鎖のゆるき腕時計佐々木靖子
春炬燵振子時計の二時を打つ佐々木靖子
ぼんぼん時計鳴るや雛のさんざめく佐々木靖子
春萌す診療室の掛時計佐々木靖子
春浅し山の端暗し時計打つ志村万香
立春や心燃え立つ時計かな志村万香
春風や時計弾みて逸る足志村万香
探梅の年深めれば時計なり志村万香
日没の時計の針も寒明ける志村万香
日時計や人みな冬に佇みて末永朱胤
冬の夢昨日の時計が鳴つてゐる末永朱胤
めぐりきて星新しき時計台末永朱胤
絵の中の時計の刻む二月かな末永朱胤
春星のめぐる夜空を時計とす末永朱胤
受験子のときどき返す砂時計西方来人
下萌やストーンヘンジは日時計か西方来人
朧夜のかすかな音や花時計西方来人
ねんねこの子供指差す鳩時計西方来人
双六の時計廻りを一寸止め西方来人
菜の花や時計回りに陽移ろふ高橋寛治
漠々と鯨の時計潮刻む高橋寛治
腹時計海鼠クルッと反転す高橋寛治
オレンジに潜む時計の進化論高橋寛治
白鯨の腹の日時計星座計高橋寛治
立冬の鏡の奥の時計鳴る武井伸子
早梅に時計の針を合はせねば武井伸子
雪催柱時計のぼんと鳴る武井伸子
植ゑ替へてアネモネの刻花時計武井伸子
花疲れして腕時計外しけり武井伸子
冬草や時計回りの散歩道近本セツ子
木の国の春の音かも時計鳴る近本セツ子
壊れたる銀の時計に春遅々と近本セツ子
時計屋のしづかなる刻春夕焼近本セツ子
昼を打つぼんぼん時計鴉の巣近本セツ子
薄氷や大名時計の金の干支辻村麻乃
秒針のずれの気になる寒夜かな辻村麻乃
読み初めは野菜とろとろ煮る時間辻村麻乃
日時計が教ふる位置や春隣辻村麻乃
啓蟄や体内時計があるごとく辻村麻乃
春の園からくり時計と花時計同前悠久子
卓上に梅わが愛用の腕時計同前悠久子
柱時計の螺子巻く父の朧かな同前悠久子
ふた春は過ぎし目覚し時計無く同前悠久子
初蝶や今iPhoneの時計が好き同前悠久子
時計台の二羽のカラスや春近し中島外男
初夢の途中で鳴るや鳩時計中島外男
図書館の柱時計や日脚伸ぶ中島外男
冬薔薇書斎に倒れし砂時計中島外男
春立つや抽斗開ければ懐中時計中島外男
木枯に君との時計硬くなり中村善枝
麻酔打ち時計の指針かすみけり中村善枝
箱積みて八百屋の時計緑さす中村善枝
時計ある部屋に主賓の夏蒲団中村善枝
冬の夜に三つ並んだ置時計中村善枝
雁かへる我が青春の時計塔西田もとつぐ
漏刻に陽の移りゆく湖の春(近江神宮)西田もとつぐ
漏刻を据ゑて水急く天智陵(みささぎ)西田もとつぐ
教へ子の古稀を過ぎゆく時計草西田もとつぐ
春のプラハ使従の出入す時計塔西田もとつぐ
冬ざれの空澄み渡る時計台む服部さやか
日脚伸ぶノートの上の腕時計服部さやか
雁渡し今日も時計の針狂ふ服部さやか
春宵や時計の音の混じり合ふ服部さやか
春めくや袖から覗く腕時計服部さやか
時計から時間はみ出す花の旅浜岡紀子
結局はアナログ時計めかりどき浜岡紀子
腕時計わすれ日永をただよへる浜岡紀子
うららかや時計塔には風見鶏浜岡紀子
念頭をはなれぬ時計鳥雲に浜岡紀子
襤褸市やふいに鳴り出す鳩時計浜田はるみ
歳晩の時計の音の大きかり浜田はるみ
鳴り止まぬ目覚し時計日脚伸ぶ浜田はるみ
村中の時計遅るるぼたん雪浜田はるみ
柱時計日永の中に止まりゐし浜田はるみ
朧夜の柱時計に振り返る牧野洋子
鳥渡る水の涸れたる水時計牧野洋子
時計など無くてもよろし竈猫牧野洋子
図書館の古き日時計銀杏散る牧野洋子
春花の織り成す綾や花時計牧野洋子
山眠る庫裏に正午の時計鳴る宮本郁江
日脚伸ぶ町の広場に時計台宮本郁江
空港に世界の時計春近し宮本郁江
毛糸玉時計の下に転がれり宮本郁江
冬日差す待合室に鳩時計宮本郁江
卓上に時計並べて雪催ひ山内かぐや
古時計の秒針追ふや寒の明け山内かぐや
如月の時計点滴向き合へり山内かぐや
腕時計苺と色を合はせけり山内かぐや
古時計止まりし床屋二月尽山内かぐや
砂時計ひつくり返し春を待つ山内美代子
待春や振子時計の進み癖山内美代子
ゆつたりと雲置く春の花時計山内美代子
腕時計外しくつろぐ花疲れ山内美代子
春愁やさらさら流す砂時計山内美代子
朝錬の靴音へ向く時計草山下添子
二人して散歩のひと日時計草山下添子
待ち合はす駅の時計や春めけり山下添子
春霖や枕辺に鳴く鳩時計山下添子
春の野へ時計が告ぐる正午かな山下添子
冬籠柱時計の下に父あべあつこ
掛時計冬日よく入る理髪店あべあつこ
旅始身に添ふ時計ありにけりあべあつこ
枕元に外す時計や枯木宿あべあつこ
愛用の時計柩に春の雪あべあつこ
秒針に息合はせ子を待つ夜長阿部暁子
雪夜道転んだ人のロレックス阿部暁子
置時計狂ひしままに日永かな阿部暁子
時計台見上げて一年生の春阿部暁子
母の元に時計戻せばあの桜阿部暁子
砂時計倒して茹でる寒の明新木孝介
冴返りローマ数字の壁時計新木孝介
秒針のない壁時計春しぐれ新木孝介
遠くから時計の鐘や鳥帰る新木孝介
亀鳴くやピンクの砂の砂時計新木孝介
大寒や秒針少し遅れをり五十嵐孝子
夕暮れの雪降る広場の時計塔五十嵐孝子
ボンボンと孫が言ふ二時春間近五十嵐孝子
冴返る螺巻く音が遠くまで五十嵐孝子
時を待ち産声響く二月かな五十嵐孝子
日時計の正午しめさぬ花曇り伊丹竹野子
遠足の当てにはできぬ腹時計伊丹竹野子
花時計おやつどき告ぐちゆうりつぷ伊丹竹野子
夜桜を避けて夜光の腕時計伊丹竹野子
過去・現代・未来をつなぐ時計草伊丹竹野子
船降りて時雨の中の時計台岩淵喜代子
見慣れたる時計も映り初写真岩淵喜代子
時計鳴り皇帝ダリアは空の花岩淵喜代子
春塵を払ひ目覚まし時計捲く岩淵喜代子
湖の古城にからむ時計草岩淵喜代子